2015/08/07

「完了時制」の攻略はコメディーを利用して

【新・英語屋通信】(39)

 TEDの公式サイトにゼイ・フランク(Ze Frank)による“Are you human?”と題したコメディーがある。「これからあなた方が人間かどうかをテストするが、当てはまる点があったら挙手してください」という聞き手を参加させる手法のお笑い芸である。
 “Have you ever / eaten a booger / long past your childhood?”(あなたは遠い昔の子供時代に鼻くそを食べたことありますか?)という設問から始めると、会場からどっと笑いが巻き起こる。
 “Have you ever eaten a booger?”は「現在完了形」という文型で、この短い漫談に同じ時制を表わす文が24回も出てくる。なんと23回が疑問形で、そのうち主語が三人称になる“Has your phone ever ??”が1度、be 動詞文系の“Have you ever been ??”が1度となっている。
 英文法書には現在完了形が“Have you ever / eaten raw fish?”(あなたは生の魚を食べたことがありますか?)などの例文で「いままでにしたことがある」という“経験”を語る文として、ever は専用の副詞の1つで、完了形には“完了・結果・経験・継続”の4種があると説明している。
 そこで、当社が複数の英語話者に日本人が英語学習で頭を痛めるテーマになっている4種の完了文の違いを説明すると、その誰からも「もう1回、言って」と要請されて、同じことを何度言っても、「何よ、それ?」という返事しか戻ってこない。英語話者は「完了の状態は完了形」で表現しているだけのことで、まったく無意識に使っているという。
 “Have you??”は“Do you??”“Did you??”“Will you??”“Would you??”などと同じく、疑問形の冒頭が<助動詞+主語>型だから、have が完了形専用の助動詞であるとわかる。ただし、後続の要素の動詞に「過去分詞形」を使うという決まりがあるので、英語を習い始めた初期段階で eat・ate・eaten・eating(現在形・過去形・過去分詞形・現在分詞形)の4種を丸暗記しておかなければならない。
 要するに、“Have you ever??”の言い方に慣れてしまえば、聞き手は残りの内容にだけ聞き耳を立てればいいのである。むしろ be 動詞文系であるか、動詞文系であるかの形式が問題で、そのすべてのパターンを口癖にしておくことが大切であると Bob Godin 氏は指摘する。
 単なる be 動詞文と be 動詞文系の完了文との違いを how を用いた wh 疑問文で見ておこう。
  How / are you?
  How / have you been?
 be 動詞の‘are’は単に“状態”を示すだけだが、‘have been’では完了形用の助動詞‘have’を使ったために、be 動詞もそれに伴って、過去分詞形の‘been’になる例である。この2つの wh 疑問文のうち、上が be 動詞文系の一般的な挨拶の慣用句で、下は「久し振りに出会った」ときの挨拶で、「過去から現在までの時間の幅」を示すため、完了文が用いられるのである。
 実際の会話では“How've you been?”とか“How you been?”となって、have を 've に短縮させたり、取り除いたりするが、‘been’があることで完了の状態とわかるのである。現在完了形はつまり、英語に特有の「過去から現在に至る期間を示す」表現で、日常的に4?5%くらいの割合で出てくるので、身に付けておくに越したことはない。「完了形には1種類しかない」と心得ていただき、理屈抜きでパターンを口癖にしてしまえば、なんてことはない。
 このコメディーは5分間弱だから、丸暗記できない量ではない。ゼイ・フランクの物真似をすれば勉強になるけど、発音が正しくないと mimicry は難しい。
2015.8.7(金)