2015/07/28

1つの語根から100の単語を覚える「語源法」

【新・英語屋通信】(38)
pose に由来する単語群
 名詞の pose は「姿勢」「ポーズ」「気取った態度」「見せかけ」などの意味を表わし、動詞は「ポーズを取る」「態度を示す」「ふりをする」などの意で使います。カタカナ語の「ポーズ」は pose とほぼ同じ範囲で使いますが、pause(休止、間)も「ポーズ」と書くので、紛らわしい点があります。
 pose は〔p〕〔o-e〕〔z〕の3音が並ぶCVC型の1音節の単語です。母音はアルファベットOの名前と同音で、語尾に黙字化したマジックeが添えられています。
 英語の「語根」(radix)は、漢字の扁傍冠脚に喩えられますが、むしろ漢字そのものに近い印象です。語根は「接頭辞」(prefix)や「接尾辞」(suffix)を従えて、新しい単語を派生させます。ラテン語に由来する語根<pose>は、漢字の「置」に近い感じですが、これを利用した<接頭辞+語根>型の単語には次の例があります。
  compose[com(共)+pose]【動】構成する、作曲する、落ち着かせる
  depose[de(降)+pose]【動】退位させる
  dispose[dis(分)+pose]【動】配列する、したいと思わせる
  expose[ex(外)+pose]【動】晒す、露出する、暴露する
  impose[im(内)+pose]【動】課す、負わせる、押しつける
  interpose[inter(間)+pose]【動】間に置く、言葉を差し挟む
  oppose[op(反)+pose]【動】反対する、対抗する、対比させる
  propose[pro(先)+pose]【動】提案する、申し込む、企てる、推薦する
  suppose[sup(下)+pose]【動】ではないかと思う、推定する、仮定する
  purpose[pur(前)+pose]【名】目的、意図、計画、用途、決心
 接頭辞に含まれる概念に呼応して、さまざまな意味を発生させています。ラテン語由来の単語は、語根の意味を知るだけで単語力を10倍くらい増強してくれます。

pose から派生した post の発展ぶり
 <pose>から派生した post は、ラテン語の「置かれた」という意に由来して、名詞には「地位」「職」「部署」「持ち場」「駐屯所」「交易所」などの幅広い意味が生じて、動詞は「持ち場に配置する」といった意味で使います。
 post はラテン語の「置かれた」の意味に端を発して「据えられた柱」となり、それが「柱」「杭」「標識柱」を指し示し、動詞は「掲示する」「張り紙をする」「貼る」「公表する」の意で使います。
 post はまた、イタリア語の「宿場」に転じています。宿場には替え馬や交替要員が用意されますが、フランス語を経由して、英語の外来語は「早馬」「早飛脚」から発展して「郵便」「郵便物」「郵便局」の意を含みます。したがって、動詞は「郵便を出す」「郵送する」という意味で使います。
 post の音声は〔p〕〔o-e〕〔s〕〔t〕の4音で、二重母音〔o-e〕は pose と同じ発音ですが、語尾音はブレンド化して〔st〕になります。日本語の「ポスト」は訛った言い方だから、英語話者には通じないと心得てください。
 post は postcard(葉書)や postmark(消印)などの合成語を作っています。イギリス英語は postbox(ポスト)や postman(郵便配達人)のように post 好きですが、アメリカ英語は mailbox や mailman のように mail のほうを好みます。
 <post>を語根とする派生語には、poster(ポスター)、postal(郵便の)、postage(郵便料金)があり、post の母音もやはり〔o-e〕で、アクセントはそこに置かれます。「ポスター」はもはや日本語ですが、カタカナ語は発音の違いを直しさえすれば、そのまま自分が使える英単語にできて、その種の外来語は優に数千はあるはずです。
 posture の名詞は「姿勢」「ポーズ」「心構え」「態度」「見方」で、動詞は「ポーズを取る」「気取る」だから、pose とほぼ同じ意味を持ちます。ただし、posture は‘o’にアクセントを置いて、短母音〔-o-〕(god(神)と同じ)と発音します。

postive と position の違い
 語根<pos>から派生する<語根+接尾辞>型には、次の2語がお馴染みです。
  positive[pos+itive]【形】積極的な、確信した、肯定的な
  position[pos+ition]【名】位置、姿勢、立場、職、地位
 <-itive>は<-ite+-ive>から成り、<-ition>は<-it(e)+-ion>から成る合成接尾群です。いずれも2種類の接尾辞が合体した語形だから2音節で、したがって2つの要素が合体した positive と position の両語は3音節になります。
 positive と position の語根は<pos>型ですから、短母音は〔-o-〕になります。そのうえで positive は最初の母音にアクセントを置いて発音します。しかし、position は2音節目の母音にアクセントを置いて、1音節目の‘o’は弱母音にします。この両語は<pos>部が同じでも、異なるリズムを作っています。
 カタカナ語の「ポジティブ」と「ポジション」の場合、後者は英語とほぼ同じ位置にアクセントを置きますが、前者をそれと同じ調子で発音する人がいます。英単語の一部の意味を拝借して使うカタカナ語は、しばしば発音が狂っているので、英語話者には変に聞こえます。機会あるごとに正しい音声を調べておくことをお勧めします。
 アクセントの位置には一定の決まりがあって、英語圏で育った者にはなんてことない規則です。非英語話者であっても、英語の音則に慣れてしまえば、アクセントを正しい位置に置くようになれます。
 余談になりますが、<post->には「後ろの」「後部の」「あとの」「次の」を意味する接頭辞があって、postpone(遅らせる)や posterior(あとの)などの派生語を作っています。語源の<post>との混同は避けてください。
(編集部)
2015.7.28(火)

2015/07/24

“You're welcome.”をすんなり言えるように

【新・英語屋通信】(37)

 “welcome”と「ウエルカム」の発音は等しくない。welcome は2音節で、ウエルカムは5音節だから、音律的に著しく違っている。
 で始まる2音節語は、welfare(社会福祉事業)と welder(溶接工)くらいしか知らない。welfare は2音節目が〔f〕で始まり、そのうえ母音に第二アクセントが置かれるので、welcome と取り違えることはなかろう。welder は日常的な単語でないし、第2音節中の母音が〔r〕型だから、welcome と聞き違えることはありえない。
 また、well(よく)に派生する合成語は、well-known(よく知られている)や well-done(よく火が通った)など数多くあるが、2音節目が〔k〕で始まる単語は見当たらないし、〔d〕で始める単語も少ない。要するに、welcome に似た音素・音節・音律を持つ単語がないから、ウエルカムで間に合っているしだいだが、その安易さに甘えたままだと、英語の発音の進歩が停滞して、不自由な気分から永久に免れられなくなる。
 welcome は〔w〕〔-e-〕〔l〕〔k〕〔弱〕〔m〕と発音されるCVCCVC型の2音節語になる。1音節目の〔w〕で唇を前に突き出しておちょぼ口を作り、〔-e-〕で口を横に開きぎみにして舌を浮かし、〔l〕で舌先を歯茎の後ろに押しつける。2音節目は〔k〕で舌の後方を盛り上げ、唇を固く閉鎖する語尾音〔m〕の直前に口を小さく開けて弱母音を入れ込む。welcome を丁寧に発音すると、そんなに簡単ではない。
 英語は母音にアクセントを置いて、その強弱でリズムを形成する言語だが、welcome では2音節目の<come>の母音〔-u-〕が弱母音「シュワー」に弱化するので、〔-e-〕を強調するのが発音のコツになる。
 相手に何かを手渡すとき、“Here you are.”(これをあなたに)と言って、“Thank you.”と返されたとき、“You're welcome.”(どういたしまして)と答えるタイミングはけっこう難しい。友達と2人でこのやりとりを日常的に正しい発音で何度も練習しておけば、実戦でうまく言えたとき、気持が晴れやかになって、もっと数多くのシチュエーションを練習したくなる。
(編集部)
2015.7.24(金)

2015/07/21

AETの英語音声指導に具体的な統一性を

【新・英語屋通信】(36)

 外国人が日本で職を得て働くには、日本語という巨大な壁が立ちはだかっている。英語話者の採用が大量に見込める唯一の職業は、AET(英語補助教員)にほかならないが、採用手段は市町村ごとに著しく異なっている。そもそも、基準がないのでは?
 AETの導入は、英語の音声教育に主眼を置くものの、何を教えるべきかが曖昧だから、全国的に統一された教授法は確立されていない。文科省は教科書検定で重箱の隅を突つくような細かい指示を出すのに、AET連のばらばらな活動ぶりは見ないふりして野放しにしている。言語は使うための道具だから、慣れるだけでは目的にならない!
 私どもが知るAETには it is の短縮形 it's と it の所有格 its の両方とも its と書く者がいた。there と their を逆に綴る者もいた。英語は話せても、読み書きの学力が足りないAETが全国にごろごろいる時代があった。現在はどうだろう?
 約70年前の終戦直後、日本人が英語を学びたがる動機は、実生活と密接に関係していた。漫画の『ブロンディ』に見る当時のアメリカの平均的家庭は、育パパのダグウッドがいて、自動車や電気冷蔵庫のある裕福さで、ミュージカル映画に胸をときめかせたが……。
 そんな日本人の憧れの的をフランスの哲学者ポール・サルトルが無個性の「画一主義」と評した。巨大資本に基づく大量生産のせいで、アメリカ社会は間違いなくワンパターン化していた。当社刊行の『アメリカの高校生』を編集したとき、教育システムまで形骸化していると知った。ファーストフード店のあり方やスポーツに興じるアメリカ人の様子は、いまなお類型化が色濃い。只今「ジャパン」は追随中か?
 わが国の英語教育は、アメリカの凋落で単なる学力判定用の受験英語と化した。国際化のもと、私どもは音声教育の重要性を鑑みて、AET向けに“How to Teach English to Japanese Students”を制作して、日本人教師が日本版の『英語ゲームの教科書』を併用すれば、格差のない効率の高い英語授業になると判断したが、大誤算だった。甘いね!
 日本をぶらりと訪れる昨今の英語の使い手は、個を掲げる「個人主義」の目立ちたがり屋だから、規制にとらわれず、やりたい放題を好む勝手主義の輩が多い。AET職は好きにやりなさいという放置主義だから、明確な目的を求めない方向がぴったり合致して、無秩序なAET授業になっている。日本人の英語力を育てる明確な目標を定めて、強いリーダーシップのもとでAETの活用を具体的に検討する時機が訪れている。(S・F)
2015.7.21(火)


2015/07/16

口の形を示した映像が見たいのですが……

【新・英語屋通信】(35)

【Q】『英語の発音とリスニングの音則』を購入して、音声をダウンロードしたら、単語の発音が入っているだけかと思っていたら、著者のバブ・ゴーデンさんが日本語で要点を説明してくれている音声もあって、びっくりしました!でも、発音の本なので、DVDや動画配信など、口の形が映像で見られたら、もっといいなあと思いました。お話がおもしろかったので、動くバブさんの姿が余計に見てみたくなりました(笑)。現在は書籍に掲載されているボイスプリントや口の形のイラストなどを参考にしながら、音声を聞きつつ、がんばって独習しています。(東京都・OL)

【A】言語の獲得では、独習以外に良策はありません。著名なスポーツ選手や芸術家に秘訣を聞いても、彼らはただ「近道はない。ただ丹念に、こつこつやるだけ」と答えます。とくに「友達(ライバル)と競争しながらの独習」はとても効果的です。
 口の形の映像は、市場でいろいろ散見できるので、私どもが同類のものを提供しても仕方ないと思って、いまのところ控えています。当社は約20年前にPV法の本家本元である The Primary Day School と連絡を取りながら、『英語のアイウエオ』と題して、単音などをVHS(ビデオテープ)に収めて紹介したことがあります。
 この映像をそのまま当社のホームページにアップしてもかまいませんが、まだPV法そのものの重要性が理解されていない段階にあり、十把一からげに扱われて、屑として埋没する可能性が高いため、もったいないので封印しています。また、コストを掛けて遊び的なツールを新しく作ったとしても、似たような低視聴率しか出ないでしょう。混乱を避ける意味もあるし、効果的でない面にやたら手をつけても、学習者の時間の無駄になるケースが多いと判断しての映像未公開です。悪しからず。
 なにはともあれ、45の単音の発声を独習しておけば、TEDなどの映像を見たとき、どんな人がどの音をどう発音するかがわかってきます。突き放すようですが、自分でも研究してください。発音研究は面白くて、ホビーになるし、自分が自発的に関わった体験は必ず身に付きます。技術の習得におまじないやマジックは通用しません。(編集部)
2015.7.16(木)

2015/07/15

grateful は grate に由来する語ではない

【新・英語屋通信】(34)

 「grateful(感謝に満ちた)と grate(こすれる)の語源の関連性」についての質問にお答えします。一口で言うと、この grate と grateful の語源は関係ありません。
 英語圏の子供であれば、台所用具の grater(おろし金)は知る機会のあるワードで、幼少期に覚えたら忘れません。“He grates on my nerves.”(彼は私を苛立たせる)は女性同士の会話に出てくるフレーズです。この grate は「軋る→擦れる→擦る→擦り潰す→触れる→触れる→引っ掻く→害する」などと幅広く意味が発展しています。目的語が nerves(神経)なら、訳語は「触る」が適切でしょう。
‘grate on my nerves’はつまり‘annoys me’だから、この a bothersome person に対する表現はいろいろあって、“He gets on my nerves.”が最も多く使われています。get は汎用性の高い動詞だから、grate の代用ができるのです。
 単に“He grates on me.”と言ってもいいし、“He rubs me the wrong way.”とか、“He pushes my buttons.”という表い方もあります。子供が喧嘩して、相手に“You're a pain in the ass.”とか、“You're a royal pain”といったフレーズを映画かTVで聞いたことがあります。
 grateful の語根[grate(快い)]は廃語になったので、からの展開と見なせますが、この語根は漢字の「謝」に相当して、派生語には grace(優美)や gratify(喜ばす)のほか、「おめでとう」すなわち congratulations[con+gratul+ation+s]などの語が数多くあります。当社刊行の『英単語マニア3』(p.114?116)を読んでいただければ、たぶん agree[a<ad(へ)+gree(好意)]していただけるでしょう。
 なお、grate には fireplace(暖炉)を囲む枠の部分の「火格子」の意もあり、この語は crate(木枠)に由来しています。grate のような1音節語には、語源違いの同音同綴異義語が多々あります。
 単語学習は奥が深く、お金の掛からないサイコーの趣味になります。英語学習は自習が中心だから、大金を消費する必要はなく、「知りたい!」という欲望が次から次へと湧いてきて、それが一生続いて終わりはありません。
(J・J)
2015.7.15(水)

2015/07/10

チャンク学習は名詞チャンクから始める

【新・英語屋通信】(33)

 「チャンクという言葉をたまに英語関係の本で見掛けるけど、英語の文型とどう関係するのか?」という類の質問にまとめてお答えします。
 日本語・英語を問わず、どんな言語も必ず“構造”を有しています。言語学の巨人ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)の指摘によると、人の言葉は似たり寄ったりの構造で、相違点より類似点が多いとのことですが、当社は彼の主張に同意しています。
 しかしながら、言語は日常的に用いる“道具”だから、使い慣れていないと利用できません。英語と日本語の構造は、大局的に同一種と言えても、実用品としては大きく異なります。そのじつ、日本人にとって、英語には使い勝手の悪い面が目立ちます。
 大まかに言うと、英文は「主語・動詞・目的語・補語・副詞類」の5種の「文の要素」で成り立っています。学校で教わるS・V・O・C以外にA(advervial)を加えればいいだけで、古典的文法の考え方から大きく外れるものではありません。
 文の要素はさておき、意味を含む最小単位は「単語」ですが、実用ではいくつかの単語を並べた「句」で利用します。この使用単位の句を「チャンク」と称しています。
 日本語の「本」はさしたる使用上の制約を受けない「名詞」です。英語の book(本)は「加算名詞」(数えられる名詞)だから、my book(私の本)・a book(ある種の本)・this book(この本)となり、複数は books(何冊もの本)・three books(3冊の本)・some books(いくつかの本)のように、限定詞(決定詞=determiner)を伴わせて「名詞句」で用います。また、some book なら「ある本」で、the book は「特定の本」だから「電話帳」にも使い、the Book と書けば「聖書」です。さらに、a book of tickets(回数券の1綴り)などの「名詞句」に展開していきます。
 数多くの合成語を作る面では、book は本と似ていても、動詞では「予約する」の意味になり、派生語の booking(予約)や bookable(予約できる)が生じるなどして、発展しやすいけれど、概念的な言葉ゆえに、使い方は簡単ではありません。
 使用上の特別な決まりがチャンクごとにあり、名詞句はつまり、文中でS・O・Cを務めたり、Aの一部に使われる「名詞チャンク」です。名詞チャンクは形が多様だから、慣れないと正しく使えません。話し言葉は会話の道具だから、脳内に完全定着させないと口から出てこないので、チャンク学習はまず名詞チャンクから始めます。
(編集部)
2015.7.10(金)

2015/07/06

〔r〕の発音の取り扱い方、そしてコツの伝播

【新・英語屋通信】(32)

【Q】日本人が最大の苦手とする[r]音を意識しすぎるあまり、入らなくてもいい場所にまで[r]を入れてしまいがちです。自分も含めて、米国に留学経験がある人に多いような。英国人と話したとき、その[r]の舌の巻きの無さに驚いていたら、「あなた、アメリカで勉強したでしょ?ちょっと[r]意識しすぎ」みたいに言われて、かえってそれからすごく気になるようになりました。意識しすぎても過剰になるし、気を抜くと全然舌が巻けない(日本語にない動きですから)、もうお手上げです。「巻きすぎず、巻く」には、ひたすら口の形の練習あるのみですか?
(東京都・OL)

【A】〔r〕と〔l〕はセットで練習します。比較対照するためです。〔l〕は口蓋に舌をべったり接触させないと出せないサウンドですが、〔r〕は舌がどこにも触れません。両者の発声法は大きく違いますが、日本人の耳には同じように聞こえます。
 日本語の「ラ行」はどっちつかずの音声で、この類のサウンドを日本人が1種類で間に合わせたため、〔r〕と〔l〕の区別ができなくなりました。ラ行は舌先を上歯の歯茎に当てて出す「弾音」ですから、あえて言えば〔l〕のほうに似ています。
 〔r〕を発音するコツは、ライオンになった気分で“grrr”と吼えてください。日本語の「グ」から母音を抜いた〔g〕を出したらすぐ、舌を巻きながら〔r〕を続けます。そして grass と green の順で練習し、ついで green grass と言ってみてください。英国人が言うとおり、舌を巻きすぎたら発音が間に合いません。
 〔l〕は「♪ランララ、ランララ」と歌うように語頭音〔l-〕の発声練習をします。そのあと、real の語尾音〔-l〕では舌先が口の天井から離れず、舌の両側から「側音」として出す様子を確かめてください。real は筋肉が無意識に動くまで訓練します。
 ちなみに、英国人の多数は real を〔r〕〔-i-〕〔弱〕〔l〕と言い、米国人の多くは〔r〕〔ee〕〔l〕と言いますが、「渡り音」(glide)の弱母音「シュワー」(schwa)を割り込ませて〔r〕〔ee〕〔弱〕〔l〕と発音する人もいます。米国のボストン地区は英国ふうで、英国人にも米国ふうに言う人はいます。練習メニューのお薦めは、渡り音を入れた“Really?”(ほんと?)です。難は易を兼ねるって感じかなあ。英語話者は一般に自分たちが簡単にできているので、このテーマを軽視しすぎています。
(編集部)
2015.7.6(月)

2015/07/02

「わかる」と「できる」と「できてわかる」の違い

【新・英語屋通信】(31)

 portfolio[port(運ぶ)+folio(葉)=1枚の紙]は「紙挟み」や「書類かばん」を意味する英単語です。そのほか「2つの項を設定して、この対立概念(イエスとノー)を組み込むと4つの局面が生じますが、その図式の形状が木の葉の葉脈を連想させることから、この図表も「ポートフォリオ」と呼んでいます。
 publish or perish(発表するか、さもなくば死)という言葉があって、近年の学者とりわけ理系の研究者は、海外の知識を導入する必要上、英語で書かれた研究論文を読まなければならず、実際すらすら読める人は多くいます。書ける人もいて、限定的ながらも、仕事英語が「わかる」人はけっこうな数にのぼります。しかし、彼らが英語を自由自在に話したり聞けたり「できる」人たちであるとは限りません。
 また、親の赴任先が英語圏であったために、幼年期から英語話者の中で育った者が少なからずいて、彼らは日常英語を難なく話したり聞いたり「できる」人たちです。しかし、専門的な知識や経験が足りなければ、通訳的な仕事に就くことは可能であっても、文化英語が「わかる」人たちとは言えません。
 英語が「できて、わかる」人は、ざらにはいません。いても超少数派だから、その主張を世の中に浸透させるのは難事業です。わが国のメディアは、英語が「わかるだけで、できない」人や「できるけれど、わからない」人たちが色メガネで見た尤もらしい情報に占拠されています。とはいうものの、英語情報は質量ともに手に負えない状況です。
 国民の大多数は、どこかの時点で挫折して、英語が「わからないし、できなくなった」者たちだから、加工された中途半端な情報に振り回されています。今後は世界からもたらされる本物の英語情報を自ら分析できる国民層を分厚くする必要があるでしょう。
 英語がわからないし、できないのは、国の方針と学習法と指導者が駄目だったからにほかなりません。日本語が使えれば、脳の言語野は正常なわけで、英語だって使えないはずはないでしょう。ただし、英語は日本人の母語ではないから、限られた時間内で効率良く学ぶしかないのです。英語話者が母語を身に付けたのと同じように学ぶには、学習時間の短さを補うために「質の良い」学習法で「できるだけ多く」トレーニングすることです。
 英語はまず「PV法」で話し言葉の音声の基本をモノにし、「語源法」でネズミ算式に語句を覚え、「チャンク法」で文型が口から無意識に出てくるよう学びます。(編集部)
2015.7.2(木)