2015/11/09

大切な内容だけ把握する「チャンク法」

【新・英語屋通信】(56)

【Q】チャンク法って、どんな方法ですか?(兵庫県・大学生H)
【A】chunk の動詞は「切り分けて“塊”にする」という意味だから、「英文をいくつかの塊に分けて、文意を即座に解釈したり、英語ですらすら表現できる手段」として、当社が Bob Godin 氏と諮って、独自に「チャンク法」と名付けた「実用英語のための文型分析法」です。ビフテキはナイフで切り分けて食べやすくしますが、英文は「チャンク」にして理解しやすいように分割します。
 言語において意味を持つ最小単位は「単語」で、8万語の実用英単語は個々に多様な意味を含んでいます。慣用表現を別にすれば、英会話で単語1つを単独に使っても、何十何百もの解釈が可能なため、何を告げているかの理解には及びません。単語は文に入って初めて意味が特定されるのです。
 ある文を耳にして、文意を単語の単位で解釈しようとすると、1語1語に深い内容がありすぎて、単語同士の関係性の把握が間に合わなくなります。じつは、文意は単語自体の意味からではなく、いくつかの語句が塊ごと認識されています。慣れてしまえば、文のままそっくりキャッチできますが、第二言語として英語を学ぶ者は、語句を塊(チャンク)ごと受け取ることを癖にする必要があります。
 “I'd like to / order a cake.”という文は、2つのチャンク(塊)で構成されています。chunk の名詞は「大きな塊」を意味しますが、チャンク法は場面に応じて1語だけの小塊にもします。
 前半の I'd like to は I would like to の4語から成るチャンクです。この4語はいずれも汎用性の高い単語で、英語の辞書にはそれぞれ1ページ前後の解説がなされています。脳コンピューターには1語ずつで処理する機能が足りないので、I'd like to という食べやすい大きさのチャンクで使っているのです。
 I would(=I'd)は「主語(S)の I に気持を表わす法助動詞 would を添えた助動詞文」を作る基本的な「文の要素」です。<S+助動詞>型の I will・you can・ she could・it may などが同種の文型で使われます。
 動詞(like)に動詞が続くと、to 不定詞にして目的語を作り、VO(動詞+目的語)型の<like+(to+動詞)>の形式にします。chain(鎖)の意の動詞を catenative verbs(連鎖動詞)と言いますが、like をはじめ、want、seem、get、go、come、begin、help、happen、expect などはその仲間です。
 後半の order a cake(ケーキを注文する)もVO型のチャンクで、order は動詞だから、like に続けるには、その前に to が必要で、to order a cake とします。ところが、話し言葉ではすでに I'd like to 型が英語話者の脳内でチャンク化されて、使用頻度が高くなっているため、VO型のみをそのあとに連ねる思考癖を持つに至っています。英語話者は無意識に I'd like to と言い、ついで意識的に order a cake を口の端に掛けます。
 そして、a cake は a small pizza や a bottle of wine に替えたりします。a back issue は定期刊行物のバックナンバーです。目的語なしに service とだけ言えば、設備の取り付けや修理をお願いするさいの日常表現です。
 order を take に代えて、take a blood sample と言えば、お医者さんが患者に血液検査を求める決まり文句です。take the rest は中華料理店での食べ残しをパック詰めしてもらうとき言うフレーズです。<take+O>型も多士済々です。
 “I'd like to / apply / for a loan.”は銀行から借入れをするさいの常套句ですが、apply(申し込む)は後ろに副詞類(advervial)の for a loan を続ける種類の動詞だから、チャンクが3つになります。a loan を a mortgage(抵当)と言えば、ほぼ住宅ローンで、a home equity loan と言っても同じです。
 当社は“I'd like to ?.”の文例を掃いて捨てるほど集めていますが、このチャンクには限りなく新表現が出てきます。I'd like to のあとに続く動詞は make、get、open、close、talk、speak、call、cash、change、apply、offer、book、try、buy、rent など何百もあって、その後ろに続くOやAも果てしがありません。人の脳の言語野には、たぶん百万ピース級のジグソーパズルが築かれています。
 “I'd like to ?”をひっくり返した疑問形の“Would you like to??”も高比率で登場します。この種のチャンクを口癖にして、無視できるまで練習して身に付け、自分の頭で考えながら、後ろにVO型やVA型を続けて言うトレーニングをする必要があります。言葉は意識下に据え置かないと、口から瞬時に出てきません。
(S・F)
2015.11.9(月)