2015/09/14

綴りの‘g’は〔j〕か〔g〕で、〔z〕ではない

【新・英語屋通信】(44)

 NHK教育テレビに『サイエンスZERO』という最新の科学情報を知る手掛かりになる恰好の番組がある。当社のスタッフも1週30分間の科学授業を受けるつもりで、とても重宝に視聴させていただいている。
 昨夜の番組テーマは autophagy であった。接頭辞<auto->(自らの)はさておいて、冒頭に男性ナビゲーターから「ファジーって何でしょう?」みたいな問いかけがあり、相方の女性ナビが「fuzzy なら“曖昧な”だけど……」と答えたら、男性ナビが「fuzzy と<- phagy>は発音が同じで……」というやりとりがあった。
 fuzzy(毛羽立った)を派生させた fuzz(縮毛)の語尾音は〔z〕で、これを無声音の〔s〕に代えると、fussy(小うるさい)が fuss(大騒ぎ)から派生している関係が認識できる。言うまでもなく〔s〕と〔z〕は発音時の口の使い方がまったく同じになる。
 <-phagy>(食べること)は接尾辞で、異形に<-phagia>があり、綴りの‘g’のアルファベット名は〔j・ee〕だから〔j〕と発音する。〔j〕は無声音〔ch〕の有声音だから、〔g〕サウンドではない。〔ch〕と〔j〕もまた口の使い方がまったく同じになる。
 最近の日本語は「ズ」と「ヅ」の関係と同様、同音の「ヂ」を「ジ」で書くので、カタカナ表記の fuzzy と<-phagy>が同一になるのは致し方ないかもしれないが、できれば両者の英語音は「微妙に違っている」と言ってほしかった。
 ちなみに、接尾辞<-phage>(むさぼり食うこと)は macrophage(マクロファージ=大食細胞)で知られるが、やはり綴りの‘g’は〔j〕の域を出ていない。
 ところが、形容詞を作る接尾辞<-phagous>(を食べる)の‘g’は〔g〕と発音して、phagocyte(食細胞)に見る接頭辞<phago->(食べる)も同じく〔g〕で発音する。
 したがって、autophagous(自食作用の)の‘g’は〔g〕で、autophagia(自食)のそれは〔j〕になる。autophagous の意味は「体内組織を自己消化して、栄養状態を維持する生体の現象」で、内容が大切なのは当然だが、発音や接頭辞・接尾辞の知識があると、単語力が労せず百倍になる。
(編集部)
2015.9.14(月)