2015/07/06

〔r〕の発音の取り扱い方、そしてコツの伝播

【新・英語屋通信】(32)

【Q】日本人が最大の苦手とする[r]音を意識しすぎるあまり、入らなくてもいい場所にまで[r]を入れてしまいがちです。自分も含めて、米国に留学経験がある人に多いような。英国人と話したとき、その[r]の舌の巻きの無さに驚いていたら、「あなた、アメリカで勉強したでしょ?ちょっと[r]意識しすぎ」みたいに言われて、かえってそれからすごく気になるようになりました。意識しすぎても過剰になるし、気を抜くと全然舌が巻けない(日本語にない動きですから)、もうお手上げです。「巻きすぎず、巻く」には、ひたすら口の形の練習あるのみですか?
(東京都・OL)

【A】〔r〕と〔l〕はセットで練習します。比較対照するためです。〔l〕は口蓋に舌をべったり接触させないと出せないサウンドですが、〔r〕は舌がどこにも触れません。両者の発声法は大きく違いますが、日本人の耳には同じように聞こえます。
 日本語の「ラ行」はどっちつかずの音声で、この類のサウンドを日本人が1種類で間に合わせたため、〔r〕と〔l〕の区別ができなくなりました。ラ行は舌先を上歯の歯茎に当てて出す「弾音」ですから、あえて言えば〔l〕のほうに似ています。
 〔r〕を発音するコツは、ライオンになった気分で“grrr”と吼えてください。日本語の「グ」から母音を抜いた〔g〕を出したらすぐ、舌を巻きながら〔r〕を続けます。そして grass と green の順で練習し、ついで green grass と言ってみてください。英国人が言うとおり、舌を巻きすぎたら発音が間に合いません。
 〔l〕は「♪ランララ、ランララ」と歌うように語頭音〔l-〕の発声練習をします。そのあと、real の語尾音〔-l〕では舌先が口の天井から離れず、舌の両側から「側音」として出す様子を確かめてください。real は筋肉が無意識に動くまで訓練します。
 ちなみに、英国人の多数は real を〔r〕〔-i-〕〔弱〕〔l〕と言い、米国人の多くは〔r〕〔ee〕〔l〕と言いますが、「渡り音」(glide)の弱母音「シュワー」(schwa)を割り込ませて〔r〕〔ee〕〔弱〕〔l〕と発音する人もいます。米国のボストン地区は英国ふうで、英国人にも米国ふうに言う人はいます。練習メニューのお薦めは、渡り音を入れた“Really?”(ほんと?)です。難は易を兼ねるって感じかなあ。英語話者は一般に自分たちが簡単にできているので、このテーマを軽視しすぎています。
(編集部)
2015.7.6(月)