2015/07/15

grateful は grate に由来する語ではない

【新・英語屋通信】(34)

 「grateful(感謝に満ちた)と grate(こすれる)の語源の関連性」についての質問にお答えします。一口で言うと、この grate と grateful の語源は関係ありません。
 英語圏の子供であれば、台所用具の grater(おろし金)は知る機会のあるワードで、幼少期に覚えたら忘れません。“He grates on my nerves.”(彼は私を苛立たせる)は女性同士の会話に出てくるフレーズです。この grate は「軋る→擦れる→擦る→擦り潰す→触れる→触れる→引っ掻く→害する」などと幅広く意味が発展しています。目的語が nerves(神経)なら、訳語は「触る」が適切でしょう。
‘grate on my nerves’はつまり‘annoys me’だから、この a bothersome person に対する表現はいろいろあって、“He gets on my nerves.”が最も多く使われています。get は汎用性の高い動詞だから、grate の代用ができるのです。
 単に“He grates on me.”と言ってもいいし、“He rubs me the wrong way.”とか、“He pushes my buttons.”という表い方もあります。子供が喧嘩して、相手に“You're a pain in the ass.”とか、“You're a royal pain”といったフレーズを映画かTVで聞いたことがあります。
 grateful の語根[grate(快い)]は廃語になったので、からの展開と見なせますが、この語根は漢字の「謝」に相当して、派生語には grace(優美)や gratify(喜ばす)のほか、「おめでとう」すなわち congratulations[con+gratul+ation+s]などの語が数多くあります。当社刊行の『英単語マニア3』(p.114?116)を読んでいただければ、たぶん agree[a<ad(へ)+gree(好意)]していただけるでしょう。
 なお、grate には fireplace(暖炉)を囲む枠の部分の「火格子」の意もあり、この語は crate(木枠)に由来しています。grate のような1音節語には、語源違いの同音同綴異義語が多々あります。
 単語学習は奥が深く、お金の掛からないサイコーの趣味になります。英語学習は自習が中心だから、大金を消費する必要はなく、「知りたい!」という欲望が次から次へと湧いてきて、それが一生続いて終わりはありません。
(J・J)
2015.7.15(水)