2015/07/24

“You're welcome.”をすんなり言えるように

【新・英語屋通信】(37)

 “welcome”と「ウエルカム」の発音は等しくない。welcome は2音節で、ウエルカムは5音節だから、音律的に著しく違っている。
 で始まる2音節語は、welfare(社会福祉事業)と welder(溶接工)くらいしか知らない。welfare は2音節目が〔f〕で始まり、そのうえ母音に第二アクセントが置かれるので、welcome と取り違えることはなかろう。welder は日常的な単語でないし、第2音節中の母音が〔r〕型だから、welcome と聞き違えることはありえない。
 また、well(よく)に派生する合成語は、well-known(よく知られている)や well-done(よく火が通った)など数多くあるが、2音節目が〔k〕で始まる単語は見当たらないし、〔d〕で始める単語も少ない。要するに、welcome に似た音素・音節・音律を持つ単語がないから、ウエルカムで間に合っているしだいだが、その安易さに甘えたままだと、英語の発音の進歩が停滞して、不自由な気分から永久に免れられなくなる。
 welcome は〔w〕〔-e-〕〔l〕〔k〕〔弱〕〔m〕と発音されるCVCCVC型の2音節語になる。1音節目の〔w〕で唇を前に突き出しておちょぼ口を作り、〔-e-〕で口を横に開きぎみにして舌を浮かし、〔l〕で舌先を歯茎の後ろに押しつける。2音節目は〔k〕で舌の後方を盛り上げ、唇を固く閉鎖する語尾音〔m〕の直前に口を小さく開けて弱母音を入れ込む。welcome を丁寧に発音すると、そんなに簡単ではない。
 英語は母音にアクセントを置いて、その強弱でリズムを形成する言語だが、welcome では2音節目の<come>の母音〔-u-〕が弱母音「シュワー」に弱化するので、〔-e-〕を強調するのが発音のコツになる。
 相手に何かを手渡すとき、“Here you are.”(これをあなたに)と言って、“Thank you.”と返されたとき、“You're welcome.”(どういたしまして)と答えるタイミングはけっこう難しい。友達と2人でこのやりとりを日常的に正しい発音で何度も練習しておけば、実戦でうまく言えたとき、気持が晴れやかになって、もっと数多くのシチュエーションを練習したくなる。
(編集部)
2015.7.24(金)