2015/06/18

バブ・ゴーデン氏の「話す・聞く・書く・読む」日本語力

【新・英語屋通信】(28)

 「Bob Godin 氏の新作『英語の発音とリスニングの音則』は、日本語なれした感じの文体ですが、本当に彼自身が書いた本ですか?」という類の質問が複数ありました。
 バブさんが日本語で話すときのぺらぺらぶりからすると、「聞く」能力も「話す」のと同じくらいあると思いがちですが、じつは妻君が使う日本語ですらよく勘違いします。話すほうは自分の言葉の在庫だけで発信できても、聞くほうは初出の単語や表現が際限なく出てくるので、頻繁に“Once more.”が返ってきます。
 「書く」能力はまあまあですが、文学に出てくる日本語の表現は多彩すぎるため、辞書を引きながらになるので、「読む」能力は十分とは申せません。書くのは自分の持ち言葉でこなせても、読む場合は受身になるからです。
 バブさんは細かい表現にこだわり、日本語を書く能力もある程度あります。しかし、この種の本は曖昧さがまったく許されないので、本書はバブさんに話してもらった内容をテープから起こして、私どもが編集しました。それをバブさんと数回にわたって読み合わせをして、訂正を重ねながら、数年かかって完成させました。
 バブさんが日本語でレコーディングするとき、あらかじめ話す内容を日英両語を混じえて、私どものアドバイスを受けて、納得のいくまで時間を掛けて整理します。そのあと、日本文を作って読むわけですが、そのとき口調がやや固くなりがちです。バブさんがリラックスして話す日頃の日本語は、聞く者が耳をそば立てるほど面白くて、そのままを使いたくなりますが、話し言葉には重複や無駄が多いので、エキスだけを抜き取ってダビングすると、全体のリズムが壊れます。痛し痒しといったところですね。
 当社がホームページにアップロードした英語音声は、学習者が利用して「役に立つ」ことに主眼を置いています。音質の統合性より臨場感を持たせることを第一義とするため、他所行きと普段着がいっしょになって、竹に木をついだ印象があるかもしれません。
 ともあれ、過去の経験から推して、CDは利用が低いようです。スタジオ録音はナマモノでなくなるからでしょう。乗物の中でリスニングする学習法なら、ホームページから無料で小型レコーダーにダウンロードしていただければいいと判断して、電車通勤の人をターゲットにしたしだいです。よろしく。
(編集部)
2015.6.18(木)