2015/06/03

単語の意味はどんどん広がっている

【新・英語屋通信】(22)

 近年、数えきれない種類の“○○○ for dummies”と題した本が出版されている。この dummies は入門者たちのことで、crocheting(クロッシュ編み)に至るまで、何でもありのハウツー本で、人を馬鹿にしたような dummy の使い方は俗語と言えよう。
 手元にある Children's Thesaurus(児童用類義語辞典)の見出しには dummy がないから、idiot で引くと、a stupid person とあり、dummy, moron, dunce, fool, dope といった類義語が見える。そこで、“Macmillan Dictionary for Children”の dummy の項を引くと、2種類の説明がなされている。
1.A figure / that is / made / to look like a person.(人に見えるように作られた姿)とある。そして、ウェディングドレスを着て店舗の飾り窓の中に飾られる dummy を例示しているから、要するにマネキンにほかならない。
2.Something / that is / made / to look like something else / that is / real.(本物のように作られた何か)とある。この例には俳優が用いるガンを挙げている。
 つまり、子供たちには dummy を人形や贋作物と教えているが、世間では dummy を「でくの棒」転じて「ぼんくら」のニュアンスで使っているわけだ。
 英語ニュースに出てくる新語や新表現は、すべて既存の単語を基にしているから、英語話者なみの想像力がないとついていけない。言葉は実生活の中でどんどん広がっているのである。
 したがって、単語が内包する意味の範囲は、辞書ではとても把握しきれない。言葉は日常生活の中で掴み取れればいいが、それができない環境下であれば、いくつかの辞書を併用しながら、人間が考えつきそうな連想力を応用的にトレースする訓練を重ねていくと、そのうち単語の全容が掌握しやすくなる。
(編集部)
2015.6.3(水)