2015/06/29

合成疑問詞で初期英語の基礎を確立

【新・英語屋通信】(30)

 technical terms(専門用語)はふつう関係者だけしか知らない。たとえば、海外の錦鯉愛好家やバイヤーなら、その品種名はもとより、業界用語の「サシ」に至るまで、日本語をそのまま翻訳せずに使っている。錦鯉は体表が鱗に被われており、サシとは「前方の鱗の下に差し込んだ部分の色が上から透けて見える様子」を指し示す専門語だが、名詞は深い内容を1語だけでほぼ伝えられる。
 当社は錦鯉に限定した月刊誌『鱗光』を50年間以上も刊行しているので、関係者なら正確な意味でサシを使えるし、専用語は特定的に使用される言葉だから、限定された範囲内の英単語や表現を知っておけば、英語によるコミュニケーションが可能になる。しかし、海外の錦鯉品評会での入賞魚の撮影で出張するカメラマンは、英語で数や色などの語を聞き取れることが前提で、そのほか専用の文型をいくつか覚えておく必要がある。
 「この鯉は何歳ですか?」「この鯉は何センチですか?」などと、入賞鯉のデータに関する質問をして、正しく聞き取って記録しなければならないからだ。尋ねる言葉は疑問形になるので、疑問詞の5W1H(who・what・when・where・why・how)を使う例が多いが、とりわけ what と how から作る「合成疑問詞」が活躍する場面は多い。
 “How old / are you?”というフレーズは遅くとも中学校で教わるが、この文型を応用して“How old / is this koi?”とでも言えばいい。特定された目の前の鯉を対象にする場面なら、省略文の“How old?”だけでも通じる。この how old が合成疑問詞である。
 また、体長を問うとき“What size?”と聞くと、5cm刻みか10cm刻みの大雑把なサイズで答えられることが多いので、正確な寸法を知りたければ“How many centimeters?”と聞けば、具体的な数字が返ってくる。what size も合成疑問詞だが、何事も臨機応変が肝心だ。いずれにしても<how+形容詞(+名詞)>型や<what+名詞>型の合成疑問詞の作り方を知っておけば、多くのケースで事が足りる。
 知識と経験を積み重ねた特定分野の「専門英語」は、その範疇の言葉を知っておけば対応できるが、何が出てくるかわからない“雑談”は、話題があちこちに飛び火するので、日常語から常識的な慣用句までの「総合英語」を身に付けておかないと会話の輪には入れない。ビジネス上の交渉事や大学の講義やコメディーは、高水準の「文化英語」だから難しいが、まずは合成疑問詞だけの「用足し英語」で第一歩を踏み出そう。
(編集部)
2015.6.29(月)