2015/06/05

チャンク法が身に付くと「分かると忘れる」

【新・英語屋通信】(23)

 アメリカのTV番組には“I shoulda been here this morning.”といった「完了助動詞文」のセリフがよく出てきます。この文の原点は<S+beV>(主語+be 動詞)型の構造を持つ「be 動詞文」で、過去や完了または話し手の気分を告げるときなど、次のような重層的な発展を見せます。
  I'm / here / for the party.(私はパーティのためにここにいる)
  I was / here / 'til ten.(私は10時までここにいた)
  I have been / here / all day long.(私は1日中ずっとここにいた)
  I should be / there / now.(私はいまそこにいるべきだ)
  I should have been / here / this morning.(私は今朝ここにいるべきだった)
 be 動詞文は状態を表わしますが、<have+been>型の「完了文」はその延長線上にあって、I have been は I've been のように短縮されます。そして、話し手の気持を添える場面は「助動詞文」にして、その完了形は should have の部分を短縮させて shouda と言います。
 チャンク法とは、フレーズをいくつかの単位に分解して、口に出してチャンク(塊)ごとを個別に音則どおり練習し、最終的に言いたい内容の文を組み立てる無意識脳を作る手法です。上記の例では、3つに区切った冒頭の固定した形を脳内に叩き込むように練習しておけば、言葉の塊が潜在意識下に住みつく状態になって、そのうち考えずに口からフレーズが出てきます。真ん中の here と there の部分は状況しだいで変わってくるし、最後の時間や目的も変化する要素で、この両方にメッセージの内容が含まれています。
 英語は論理的な構造を持つ言語だから、理屈がわかれば、積み木遊びのように、文を無限に発展させられます。最初は「分ければ分かる」という考え方で練習し、最後に「分かれば忘れる」ことを目指して言葉を身に付けていきます。
 母語の話し言葉は意図せず「身に付く」もので、書き言葉は「身に付ける」学習対象です。そのじつ、文字がなかった時代は語り部が口承で物語を伝えてきたし、流暢に話せても、読み書きできない者がついこの間まで世界中に溢れていました。幼児期に使わなかった外国語は、書き言葉なみに学んで身に付けるしかありません。
(Bob Godin 監修)
2015.6.5(金)