2015/06/09

英語の歌を楽しむ発音のノウハウ

【新・英語屋通信】(25)

 英語の歌が正しく歌えると、とても楽しくなる。歌うコツの1つは「単音の音質」を正確に発音することで、もう1つの要領は母音上の「アクセントの強弱」を間違えないことに尽きる。「音質」と「強弱」の2つを意識して歌えば、おのずと英語の「リズム」が生じて、どんな曲でも歌えるようになる。
 しかし、最初から速いテンポの曲に取り組むと基礎が疎かになるので、ひとまず童謡の“Where is Thumbkins?”などで練習するのがいい。この曲の tune(節)は“Are you Sleeping?”から拝借した指遊びだから、アメリカ人なら誰でも知っている。

  Where is Thumbkin? Where is Thumbkin?
  Here I am, here I am, How are you today, sir?
   Very well I thank you, Run away, run away.

音声1(mp3) 音声2(mp3)

 使用単語は16語しかないが、単音は25種(子音15・母音10)もある。簡単に歌えそうだが、なめては事を仕損じる。基本だから、少し詳しく説明しておこう。
・where…〔wh〕は唇をすぼめて前に突き出し、〔-e-〕系のr型母音の〔ere〕では舌を口の奥に軽く巻き込む。1音節語だが、2つの音を明確に発音しなければならない。
・is…短母音〔-i-〕と摩擦音系の有声音〔z〕から成る。
・thumbkin…子音は〔th〕〔m〕〔k〕〔n〕の4音で、短母音の〔-u-〕と〔-i-〕を挟んで2音節になる。bomb(爆弾)などと同様、〔mb〕の‘b’は黙字化が起きる語形。
・here…〔h〕は肺から空気がストレートに出てくる無声音で、これに〔-i-〕系のr型母音が続くので、where よりは易しいが、安易に発音すると英語話者の耳に届かない。
・I…二重母音の〔i-e〕で、I am の言い方には慣れていても、well I での〔l〕に続く〔i-e〕では発音が甘くなりやすい。
・am…短母音〔-a-〕は日本語にはないサウンドだから、口の開け方と舌の位置の止めどころが難しい。また、鼻音の〔m〕に母音を加えて「ム」としないように。
・how…〔h〕の息を出すと同時に、日本語の「アウ」を短くした〔ow〕を続ける。
・are…r型母音を代表する長母音〔ur〕そのもので、子音の〔r〕の母音バージョンだから、舌の巻き込みをはっきり意識する必要がある。
・you…二重母音の〔u-e〕そのものだから、〔ee〕と〔oo〕の2つの長母音を併せた音になる。唇をゆっくりとすぼめていく気分で発音する。
・today…〔t〕と〔d〕は同系の閉鎖音で、両音の間に短母音〔-oo-〕を挟み、2音節目の〔ay〕は二重母音〔a-e〕の別の綴り。
・sir…無声音〔s〕は〔z〕と同系の摩擦音で、〔ir〕は〔ur〕の別の綴り。
・very…〔v〕は上歯で下唇を噛む〔f〕の有声音で、短母音〔-e-〕を添えたあと、巻舌音の〔r〕を続けて、最後はアクセントのない〔-i-〕系の弱母音になる。
・well…〔w〕は〔wh〕の有声音で、短母音〔-e-〕のあとを側音〔l〕で締める。
・thank…〔th〕〔-a-〕〔ng〕〔k〕の4音から成るが、語尾に子音が2つ続くため、後続の音が次の単語に連結されやすく、ここでは母音〔u-e〕つまり you をリンキングさせて than|k_you のようにCVC|CV(子音+母音+子音|子音+母音)で言う。
・run…語頭子音〔r〕と語尾子音〔n〕に挟まれた〔-u-〕は最も中立的な短母音。
・away…way は〔w〕と〔a-e〕の2音で、語頭の‘a’は弱母音のシュワーで添える。
 この歌に出ない子音は、摩擦音〔sh〕系と破裂音〔ch〕系だが、類似音の〔s〕〔z〕で代用されている。〔qu〕は〔wh〕と共通するし、〔y〕は you の中に似た音がある。
 歌詞の2番で thumbkin が pointer(人差指)に替わるので、母音〔oy〕が出てきて、3番の tall man(中指)には長母音〔aw〕がある。この歌には弱母音もあるし、where と here では〔-e-〕系と〔-i-〕系の二重母音の後半がr型母音の〔弱r〕になる。
 登場しない母音は、米音特有の〔-o-〕だけだが、5番の baby(小指)を Bobby(バブさん)に替えれば、短い譜面ながら子音の閉鎖音〔p〕〔b〕も加わり、単音がほぼ勢揃いして「選択して網羅」されている。
 要点は very well I thank you の1節で、〔v〕〔r〕〔w〕〔l〕〔th〕〔ng〕〔k〕の7つの子音の並びでは、口と舌を素早く移動させるトレーニングになる。正しい発音で歌えば、その技術が次のステップに結び付く。
(Bob Godin)
2015.6.9(火)