2015/05/12

ギリシア・ラテン語系の英単語は漢字に似て

【新・英語屋通信】(9)

 NHKに「白熱教室」と題した海外の大学の授業を要約した番組(毎週金曜日午後11時より55分間)があります。その中で放送された「ハリウッド白熱教室」は、南カリフォルニア大学(University of Southern California)の映画芸術学部の Drew Casper(ドリュー・キャスパー)教授による講義でした。
 授業中、教授が受講者に「ギリシア語由来の photography(写真撮影術)という言葉はとても響きがいいけど、その語源を知って私はいっそう嬉しくなってね」と興奮ぎみに語り、黒板にギリシア文字で「フォト」と「グラフィン」と書いて、その原義を知っている者は誰かいるかいと尋ねるシーンがありました。
 挙手したアンナという生徒に「驚いた、知っているのかい?」と教授が迫ると、彼女が「私、ギリシア人なんです」と答えて、教室の中が笑いに包まれるシーンがありました。教授が「ギリシア人なの?本当に。こんな偶然ってあるのかい?仕込みじゃないの?」と言うほどだから、アメリカで英単語の語源考がないがしろにされていることが想定できます。アンナは「フォト」が「光」で、「グラフィン」が「書く」と答えましたが、英単語の語源については、日本人の英語学習者のほうが深い関心を寄せていると感じました。
 たいていの英和辞書が photograph[photo+graph(記録)]はギリシア語で「光で書いたもの」と説明しています。派生語の photography[photo+graphy(表現法)]をはじめとして、photographic[photo+graphic(graph の形容詞語尾)]は「写真の」で、photographer[photo+grapher(記録する人)]は「カメラマン」の意と覚えてきましたし、photograph に付ける接尾辞の<-y><-ic><-er>の語形も知っています。
 一方、英語話者はラテン語やギリシア語の語源を知らなくても、幼少期から使ってきた単語なら、音声と意味を耳で聞いて一致できるのです。日本人が漢字の偏旁冠脚について曖昧にぼんやり知っている状態に似ているようです。
(K)
2015.5.12(火)