2015/05/20

「実用英語」における5段階の実力

【新・英語屋通信】(15)

 一口に「実用英語」といっても、ピンは英語の native speaker(母語話者)なみから、キリは命令された用事を理解できるだけの Janitor English(掃除夫英語)まで、多層なレベルに広がっている。流暢でなくても、相手と意思の交流ができれば、役に立つ「使える英語」と言えるし、自分が置かれた状況下の用件がこなせれば、ひとまず実用英語の使い手と見なして構わない。
 単語1つだけで伝える初級者が使う「1語英語」は、いわば「断片英語」と呼ぶべきカタコトだが、握手を求めて“Friend!”と言い添えれば、聞き手は親しくしてもらいたいのであろうと推察してくれる。ごくごく初級の入門英語だけど、話が通じたのであれば、初歩的ながらも実用英語と認めてよかろう。
 ついで、挨拶をしたり、交通機関を使ったり、ショッピングができたりと、旅行者が使う程度の英語は、ほとんど1秒以内のフレーズで用が足りる。中級レベルの「1秒英語」は、いうなれば「用足し英語」でしかないが、実用英語になっている。
 しかし、英語圏で生活すると、日常品を買い求めるときなど、正確な数値のやりとりをしたり、物品の用途を教わったりする。公私両面での人間関係が発生するので、Q&A的会話が多くなり、理由を述べるとき複文を使う場面も生じる。毎日的なフレーズはほぼ「2秒英語」になるが、この種の「生活英語」は上級者の英語と言ってもいい。
 つまるところ、言葉は手段でしかなく、社会活動のための道具でしかないから、それぞれの業務分野で流通する「範囲内英語」では、専門用語や特殊表現が多くなる。職種ごとに難易度が大きく違うものの、この種の「仕事英語」は有段者の英語と言えよう。
 そして、英語の講演を聞いても理解できるし、ディスカッションにも参加できるし、コメディーを観劇して笑えて、英語話者と対等に渡り合えれば最上級の英語力を身に付けたと見なせる。高段者が用いるこの「総合英語」は、いうなれば「文化英語」にほかならない。ここまで到達すれば、もはや英語の達人と言って差し支えない。
 人口の減少が続くわが国では、何をどうしたところで今後は国内需要が激減していく。売り手すなわち供給側は、いきおい海外のマーケットに踏み込まざるをえないが、そのためには世界共通語である実用英語の習得は避けて通れない。(S・F)
2015.5.20(水)