2015/05/07

uncle と ankle はともに「アンクル」

【新・英語屋通信】(7)

 「カタカナ語」を収録した「外来語辞典」は、日本語辞典の1種であって、外国語辞典ではありません。日本語への浸透度の深さによって、カタカナ語(外来語)か否かが決定されています。
 uncle(おじ)と ankle(足首)は、いずれも「アンクル」と書きますが、不思議なことに、後者は2万語を掲載したカタカナ辞典に出ていません。原語(大多数が英語)の側からすれば、カタカナ辞典は片手落ちと言うか、掲載されてなくて「えっ!」と驚かされる反面、こんな言葉まで出ているのかとびっくりさせられます。
 uncle の「アンクル」には、派生語が United States の頭文字をもじった「アンクル・サム」(Uncle Sam(アメリカ人もしくはアメリカ合衆国)くらいしか見当たりません。ところが、姿の見えない ankle の派生語は目白押しの印象です。
 「アンクル・レングス」(ankle length=くるぶし丈)に関連する「アンクル・ソックス」(ankle socks=くるぶしまでの短い靴下)や「アンクル・ブーツ」(ankle boots=足首までのブーツ)は服飾用語です。「アンクレット」(anklet=足首を飾るバンド鎖)は装飾品として知られますが、接尾辞の<-et>が指小辞だからか、足首までしかない短いソックスを指し示す例もあります。
 「アンクル・サポーター」(ankle supporter=足首用サポーター)や「アンクル・ウォーマー」(ankle warmer=足首を暖めるすね袋)はスポーツ用語です。ちなみに、後者は「レッグ・ウォーマー」(leg warmer)とも言います。自転車競技は「アンクリング」(ankling=足首の関節を使うペダルの踏み方)という用語を使っています。
 カタカナ語が増える理由は、適切な訳語を見つけにくいからですが、ankle warmer は脚絆でもゲートルでもなく、野球の捕手が着ける leg-guard(レガーズ=すね当て)とも違うし、実際のところ訳語の設定に困りました。各分野で使用されるカタカナ語を網羅すると、おそらく5万語は超えるでしょう。
 uncle と ankle の発音の違いは、最初の母音の〔-u-〕と〔-a-〕だけですが、日本語に「ア」が1つしかないため、異なるサウンドが同じ表記になるのです。なお、〔n〕は両語とも〔ng〕の別の綴りで、〔c〕と〔k〕は同じです。〔-le〕は音節主音になる子音の〔l〕だから、語尾の‘e’はサイレントされます。
(K)
2015.5.7(木)