2015/05/02

<No+名詞>型の省略文を使いこなす

【新・英語屋通信】(4)

“No onions.”と“Hold the onions.”
 当社では海外出張に出掛ける担当者に向けて、渡航直前に英作文の俄講習をする場面があります。そのおり、受講者にまず自分の言いたい表現を10個ほど提出させて、それをテーマに基本文型とその応用を説明しています。内容は業務より生活に関する everyday expressions(日常表現)が多くなりがちです。

 「タマネギを抜いていただけますか?」

 このフレーズの最も簡明な英文は“No onions.”(タマネギなし)ですが、丁寧に言いたければ、前後どちらかに please を付ければいいと伝えています。<No+名詞>型は代表的な省エネ文ですが、省略前の英文の構造には触れないほうがいいでしょう。
 ちなみに、英語話者は“Hold the onions.”をよく使います。hold の基本義は「保持する」ことで、「保つ」→「維持する」→「状態が続く」と発展して、“Hold it!”と言うと、写真を写すときなら「動かないで!」となり、電話なら「切らないで!」となることから、「待って!」→「やめて!」という意味で使います。“Hold the onions.”は、ゆえに「タマネギを入れないで」という表現になるのです。

<No+名詞>型の日常フレーズ
 日本人が最近よく使う“No problem.”は「問題なし」の意味だから、「いいとも」とか「どういたしまして」という用法に転じています。“No trouble.”は trouble(困難、迷惑、心配事)のない状態だから、“No problem.”と同じ状況で使うことがあります。
 “No sweat.”は「汗いらず」だから、やはり「問題ないね」→「簡単だよ」→「平ちゃらだ」といった感じで使います。
 “No way.”は「方法なし」だから、万事休す的に“No way!”と叫ぶと、「無理だ!」→「駄目だ!」さらに「とんでもない!」となります。“No chance.”も似たような表現ですが、将来に希望がない局面のフレーズです。
 “No kidding!”の kid は、動詞の「冗談を言う」とか「からかう」から出ているので、「冗談じゃない」→「嘘じゃない」となります。“No kidding?”と尻上がりに言うと「嘘でしょう?」→「まさか!」というニュアンスになります。

<No+名詞>型の場面は広がる
 “No sirree!”は「とんでもない!」という拒絶表現です。“No, sir.”のもじりと見なして、フレンドリイな場面で使う例を数名の英語話者から教わりました。sirree が載っていない辞書は多いけれど、英語話者ならこの表現をたいてい知っています。音の並びは〔s〕〔弱〕〔r〕〔ee〕で、アクセントを第2音節の長母音に置いて発音しないと英語話者には通じません。“Yes sirree!”は“Yes, sir.”のもじりで、「いいとも」といった感じで使われます。
 “No tresspassing.”は「通行止め」で、“No admittance.”なら「入場禁止」です。“No pain, no gain.”は「苦は楽の種」と訳されていますが、encouraging someone to try someone(誰かが何かにトライするときに力づける)言葉で、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」(If one doesn't enter the tiger's den, one can't get cubs.)といった状況で使う人もいます。
 “No ketchup.”や“No mayo.”は、軽食堂で「ケチャップはなしで」とか「マヨネーズは付けないで」という要求ですから、“No onions.”と同様のニュアンスで使います。<No+名詞>型のフレーズは、ほかにいくらでもあるし、新しい表現がいくらでも作れます。
(K)
2015.5.2(土)