2015/05/01

英語は英語話者から教わるべき

【新・英語屋通信】(1)

新刊の『英語の発音とリスニングの音則』の著者バブ・ゴーデン(Bob Godin)氏の言語背景を簡単に紹介しておきます。彼はアメリカ人で、出身地はフロリダ州です。
 フロリダは引退者たちが集う地域で、そのせいかアメリカ各地の訛りが混じり合って、現在は最も癖のない「標準米語」が話されています。平均的という意味から、この種の米語をアイスクリームの基本の味に因んで「バニラ・イングリッシュ」と呼んでいます。
 バブの父親はフランス系カナダ人です。ニューヨークに移住したとき、そこがユダヤ人の多い職場だったため、ドイツ語から派生したイディッシュ語(Yiddish)を介して英語を理解するようになったものの、フランス語が母語だから、家庭では強い仏語訛りの英語も使っていたそうです。母親はオーストリアからの移民ゆえに、ドイツ語訛りが強烈に響く英語を使用していたとのことです。
 バブがまだ高校生のころ、コリアン食堂でアルバイトをした関係で、彼はいみじくも韓国語を少しかじりました。バブはスペイン語を使う中南米系の人が多く住む隣接地を生活圏とし、家庭では外国語訛りの強い英語を耳にしながら、韓国語の音声まで覚えて、幾種類もの言語音声が入り混じる環境下で標準米語を身に付けました。
 日本語は沖縄に赴任してから学び、独学でモノにしています。1日8時間のペースで日本語学習にどっぷり浸った時期もあり、本からも学ぶが、一般社会で使う日常語を重点的に身に付けたそうです。そのため、バブとの会話では、しばしば沖縄方言が飛び出して、聞き手を面食らわせます。披露したい面白いエピソードがふんだんにあります。
 バブは俗に言う「日本語ペラペラ外人」ですが、率直に言って、話し言葉は活用語の語形変化がいまいち不十分です。接続詞の使い方はワンパターンですが、日本人が知らない自作漢語を使ったりもします。リスニングは拗音を正確に聞き取れず、初対面の人の言葉に慣れるまで多少の時間が掛かります。100%とは言えませんが、聞き慣れた人の言葉やテレビで使われる話し言葉なら問題なく聞き取ります。
 ピアノはそれを弾ける者から教わるのが常道で、サッカー選手を目指す子供は経験者から指導を受けます。英語もまた、これを母語とする話者から習うのが王道です。当社が発行する英語教材の執筆陣が英語話者である理由は簡単で、彼らの母語が英語だからにほかなりません。
(S・F)
2015.5.1(金)