2015/05/12

英語の Children Dictionary に見る発音用記号

【新・英語屋通信】(10)

英語話者はほぼ3歳までに話し言葉を獲得します。文字が読めるようになる時期は、平均的に就学のちょっと前ころでしょう。そのとき、自分が言ったり聞いたりする音声と文字の綴りを一致させる手段として「フォニックス」が活用されています。ただし、フォニックスには特定された方式がありません。
 日本人の子供が仮名の五十音表に示される文字を丸覚えするのと同様、フォニックスでもやはり、音声と一致する基準の語形は丸暗記です。大半の Children Dictionary において、フォニックスに準じる綴りの一覧表がすべての見開きページの角っこに示されている様子からして、その種の事情が汲み取れます。
 どの辞書も25種前後の綴りの読み方を記号的に掲げていますが、辞書ごとにそれぞれ異なる数を紹介しています。ウェブスター(Webster)が最も多くて26種を掲げており、その内訳は母音が19種(弱母音のシュワー1種を含む)で、子音は7種だけです。
 子音では、bath の〔th〕と区別するため、綴りが同じ feather の〔th〕を斜体で示しています。ring の〔ng〕、church の〔ch〕と shade の〔sh〕のほか、実際の綴りと異なる記号を用いて wheat の〔wh〕は〔hw〕とし、measure の〔s〕は〔zh〕で表わしています。マクミラン(Macmillan)やホートン(Houghton)では、2種の〔th〕の違いを指示するだけです。私どものPV法が feather で〔th"〕を使い、measure では〔sh"〕として、2種の有声音に濁点を付けて記号化した理由も区分が目的です。
 母音については、ウェブスターが18種と弱母音を掲げた状況からして、母音重視の姿勢がよくわかります。英語では子音の発音はさほど問題ではなく、多様な母音の違いを判別することが大切であると一目瞭然で理解できます。
 わが国のテレビ講座での発音学習では、母音を軽視して、子音の違いだけを大袈裟に騒ぎ立てていますが、その姿勢は噴飯物というしかありません。英語は母音に強中弱のアクセントを置いてリズムを形成する言語だから、弱母音のあり方を知ることがいかに大切であるかを肝に銘じてください。
(編集部)
2015.5.12(火)