2015/05/02

“The Macmillan Guide of English Grammer”

【新・英語屋通信】(5)

目から鱗の生涯の友とすべき英文法書
 本書は英語学習者の「目から鱗が落ちる」英文法のガイド本と評して過言ではない。紹介するにあたって、当社の蔵書を取り出したら、背の無線綴じが外れて、本がバラバラに壊れた。中身は赤のアンダーラインと蛍光ペンでカラー印刷のようになっている。
 本書には「あとがき」がなく、「序」らしきものが Introduction の冒頭に Aims(目的)と題して、わずか5行だけある。曰く「本書は伝統的な英文法を学ばなかったり、勉強したが忘れたという英語のネイティブ・スピーカーたちが英語をうまく使いこなすための案内書で、外国語として英語を学習する人たちの興味もそそるであろう」と。
 紹介するにあたって本を開いたところ、コメントを書く以前に、思わず読みふけってしまった。本書の序章に10数ページの「索引」があって、掲載項目のページも示されているので、知りたい内容にすぐに行き着ける。そのあと「文法とは何ぞや?」の章で本書の構成が簡単に解説され、次の章で「文型」について触れている。
 わが国の学校で教える5文型は、英文がS・V・O・C(主語・動詞・目的語・補語)の4種の構成要素から成ると説明している。一方、本書はA(副詞類)を一人前に扱って、英文型のエレメントはS・V・O・C・Aの5つと定めている。
 じつはわが国の英文法学者の中にもAの存在に手を焼いて、ひそかにM(modifier=修飾語句)と名付けて、実質的に副詞類を認めた文法書がいくつかある。ところが、同じ著者が学校英語の参考書類では「4要素・5文型方式」で英語の文型を解説している。
 Aの要素を欠く英文型は、耐震構造にならないのに、約100年前に確立された5文型方式に従わないと文部科学省の検定に合格しないのだろうかとの疑念が湧く。もしそうであるとしたら、日本人の英語オンチを文科省が大量生産していることになる。
 本書はまた「品詞」の働きを明解に説明している。わが国の文法学で隅っこに追いやられた determiners(決定詞=限定詞)の機能を強調した点はとくに有益と感じる。
 著者の Rosalind Fergusson と Martin Mauser は、ともに Oxford など多数の辞書に関わる lexicographer(辞書編集者)と紹介されている。本書を生涯の友とすることを薦めたい。手の届く場所に置いておきたい1冊ではある。
(編集部)
2015.5.2(土)